伊吹山の気象と立地環境
作成:筒井杏正

 伊吹山は北陸に広がる両白山地の南西端に連なり、また若狭湾と伊勢湾を結ぶ最も狭い地域に位置しています。

▲伊吹山は、若狭湾から北西気流と伊勢湾からの南東気流が流入しやすい。
 したがって日本海から流入する雪雲の通り道に当たり、山頂付近は雪が深く積もります。

 1927年に記録した積雪1182cmは常設の山岳気象観測所のうちでは世界の極値といわれています。(今の測候所は閉鎖)また山頂の年平均気温は6.1°Cで北海道の稚内とほぼ同じです。なお、日最大風速は10m/s以上の日数が年間で300日に達します。 (文責:武田栄夫)
■伊吹山の気象について【気象予報士 武田栄夫氏の資料から引用】

1.伊吹山付近の地勢

 伊吹山は北陸気候区の南西端に位置するため、降雪・積雪の確率が高い。

 若狭湾から北西気流と伊勢湾からの南東気流が流入しやすいことで、風が強く、きりが良く発生し、降雨量も高い。


2.伊吹山の気温

 山頂の気温は、四季を通じて北海道稚内に極めて近い=植生に関係
ここでは、緯度10度の差が1,370mの高度差に相当する。

 図1に、伊吹山と彦根および稚内を比較した年間月別平均気温について示す。
 概していえば、いずれに関しても伊吹山の気温は、年間を通じて彦根より7〜9℃も低く、北海道の北端に近い稚内とほぼ同じである。

滋賀県周辺の地勢図
 細かく見ると伊吹山の平均気温は、年平均が6.1℃で彦根より8.0℃低く、最寒月の1月は-5.5℃、8月は18.0℃で彦根との気温差は8.4〜8.7℃で寒候期と暖候期の差はほとんどない。

 山頂の5月の平均気温(9.4℃)は彦根の4月上旬の気温(9.9℃)にほぼ相当するが、8月の平均気温(18.0℃)は彦根の5月上旬(18.0℃)に相当し、季節感の相異が大きくなる。

図1

▲年平均気温の分布
2.伊吹山の湿度

 寒候期には、若狭湾からの北西気流が、また暖候期には伊勢湾から南東気流が流入する通路に位置するために、伊吹山の山頂付近はいつも雲におおわれやすく、年間を通じて湿度が高い。
 年平均相対湿度は、88%で、7月に94%、8月には93%に達し、12月や1月でも90%を維持している。梅雨から盛夏期にかけては雨雲や霧に、冬は雪雲におおわれやすくなる。伊吹山において、湿度が最も低いのは5月の81%であるが、年間を通じて相対的に高い。
3.その他

 ・山頂の風速=年平均風速8.3m/s(1〜2月=10.4〜10.6m/s,7〜8月=6.5〜6.6m/s)
 ・山頂の積雪の記録=1927年2月14日に1182cmを観測
  常設の山岳気象観測所としては、世界の極値
  1981(昭和56年豪雪)は820mで第4位